今日は久しぶりの晴天で、ポカポカ陽気でした。息子の学校での卒業式も、和やかな雰囲気の中、無事終了しました。祝辞もとちらずに読むことができ、ホッとしています。
さて、今回ご紹介するのはこの本。
「窯変 源氏物語 1」橋本治 著 ※全14巻

「窯変(ようへん)源氏物語 1」
橋本治 著
中央公論社 刊
※現在は文庫本※
先日、図書館に行くと、「追悼 橋本治氏」コーナーが設けてありました。その中にこの本が置いてあり、以前から興味があったので、借りてみることにしました。
ご存知の方も多いかと思いますが、この「窯変 源氏物語」は、通常の現代語訳と異なり、原作を基本にした二次創作的なものとなっています。
本書は紫式部の書いたという王朝の物語『源氏物語』に想を得て、新たに書き上げた、原作に極力忠実であろうとする一つの創作(フィクション)、一つの個人的な解釈である。
P.297より
語り口のスタイルも、第三者からの視点からではなく、光源氏本人の視点から語っている、私小説のスタイルを取っています。
そのため、光源氏の心情を深く掘り下げた表現が随所に見られます。
例えば、左馬頭の女の一人…「額髪を小耳に掻き上げてうるさそうに動き回る、色気のない家事一点ばりの女」…の話に、
「ただ、あなた一人の心がほしい、その為にならどんな費えも惜しみはせぬ」と、そう思う人の心がなぜ分からぬ?
なぜ?
なぜ分からぬ?
「あなた一人を求めて、どんな苦労も惜しまぬ」という、その、恋うる心がなぜ分からぬ?
「帚木」 122ページ9行~122ページ14行より
あなたは人を思いはせぬのか?
と、ある意味、女を出世のための手段くらいにしか思っていない男たちへの批判めいた心情が吐露されています。
個人的に引き込まれたのは、「帚木」の段で、女の品定めの話が進んでいくうちに、源氏があどけない少年から一人の男へと自己認識が刻々と変わっていく様子でした。
「色好み」と呼ばれるに相応しい外貌を持ちながら、十七歳の私は女達に深入りすることもなく、宮中にあった。
「帚木」76ページ16行~77ページ1行より
そのくらい堅物であった源氏が、段の終盤では、
私は女を狩らねばならない。
「帚木」138ページ3行目
というふうに豹変していくのです。
これには驚きました。
さて、ここから源氏の華麗な女性遍歴が始まっていくのですが、この巻は「桐壺」「帚木」「空蝉」「夕顔」までで一つの区切りとなります。
2巻からの続巻は以下の通り。
- 2 若紫 末摘花 紅葉賀
- 3 花宴 葵 賢木
- 4 花散里 須磨 明石 澪標
- 5 蓬生 関屋 絵合 松風 薄雲
- 6 朝顔 乙女 玉鬘 初音
- 7 胡蝶 蛍 常夏 篝火 野分 行幸 藤袴 真木柱
- 8 梅枝 藤裏葉 若菜(上)
- 9 若菜(下) 柏木
- 10 横笛 鈴虫 夕霧 御法
- 11 幻 雲隠 匂宮 紅梅 竹河
- 12 橋姫 椎本 総角 早蕨
- 13 寄生 東屋
- 14 浮舟 蜻蛉 手習 夢浮橋